聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
胃癌由来の胃液エクソソームの機能分子の解析
辻 顕介山本 博幸末永 大介森田 亮吉田 良仁安田 宏大坪 毅人伊東 文生
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2018 年 46 巻 3 号 p. 111-118

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抄録

胃癌は,癌部位別死因の上位であり,侵襲性の低い胃癌早期診断,胃発癌リスク診断マーカーの開発は重要な意義を有している。細胞から分泌される小胞であるエクソソームが胃液のような酸性環境でも安定していることに着目し,本研究では,超遠心法を用いて胃液からエクソソームを抽出し,その機能分子(microRNA,DNA)の胃癌における異常を解析した。走査型電子顕微鏡とウェスタンブロットにより胃液からのエクソソーム抽出を確認した。リアルタイムPCR法にて解析したmicroRNA-34(miR-34)の発現は,胃癌患者において,非癌患者に比べ有意に低値であった。miR-34発現の低下の要因として,エクソソーム由来のDNA(exoDNA)をバイサルファイト処理し,パイロシーケンシングによるDNAメチル化を解析した。miR-34b/cのDNAメチル化は,胃癌患者において,非癌患者に比べ有意に高値であった。胃液exoDNAを用いたmiR34b/cメチル化解析結果と同一症例の胃癌組織パラフィン切片から抽出したDNAを用いたメチル化解析結果は,有意に相関していた。さらに,Helicobacter pyloriH. pylori)の病原タンパク質cytotoxin-associated gene A(CagA)に対する抗体を用いたウェスタンブロットにより,胃液エクソソーム中にCagAを検出した。胃液エクソソーム機能分子の解析は,H. pylori感染を含めた胃癌の診療において有用であると示唆された。

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© 2018 聖マリアンナ医科大学医学会
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